物部大連

物部氏は、元々は兵器の製造・管理を主に管掌していたが、しだいに大伴氏と並ぶ有力軍事氏族へと成長していった。5世紀代の皇位継承争いにおいて軍事的な活躍を見せ、雄略朝には最高執政官を輩出するようになった。物部氏は解部を配下とし、刑罰、警察、軍事、呪術、氏姓などの職務を担当し、盟神探湯の執行者ともなった

物部氏は528年継体天皇22年に九州北部で起こった磐井の乱の鎮圧を命じられた。これを鎮圧した物部麁鹿火(あらかい)は宣化天皇の元年の7月に死去している。

九世孫から物部尾興の十三世孫までの大連を経験した人物

なお、九世や十世などがついているのは先代旧事本紀の各世代の筆頭に挙げられた人物である。各人物の下の数字は大連を務めた天皇の在位期間である。

系図を見ると十世の物部印葉(イニハ)は三世紀応神天皇の大連だが、その兄弟は5世紀允恭天皇や履中天皇などの大連である。十世で世代の飛躍があるのだ。また、十一世孫の物部眞椋(マクラ)については十一世孫の筆頭に挙げられながら大連ではない。

先代旧事本紀と日本書紀での大連は以下の通りである。

履中天皇 先:物部伊莒弗 日:物部伊莒弗
反正天皇 先:物部伊莒弗 日:
允恭天皇 先:物部麦入日 日:
安康天皇 先:物部大前日 日:物部目・大伴室屋 
雄略天皇 先:物部布都留 日:物部目・大伴室屋
清寧天皇 先:物部目日日 日:大伴室屋
顕宗天皇 先:物部小前日 日:
仁賢天皇 先:物部木蓮子 日:物部麁鹿火・大伴金村
武烈天皇 先:物部麻佐良 日:物部麁鹿火・大伴金村
継体天皇 先:物部目日日 日:物部麁鹿火・大伴金村       
安閑天皇 先:物部麁鹿火 日:物部尾輿・大伴金村 
宣化天皇 先:物部押甲日 日:物部麁鹿火・大伴金村 
欽明天皇 先:物部尾輿日 日:物部尾輿・大伴金村 

履中天皇以前の大連は一世紀の垂仁天皇の物部十千根大連となる。
また、武烈天皇は大伴金村が大連であるが、なぜか大伴室屋が登場する。

《武烈天皇三年(辛巳五〇一)十一月》十一月。詔大伴室屋大連。発言濃国男丁。作城像於水派邑。仍曰城上也。

物部麁鹿火は宣化天皇元年に亡くなり、物部尾輿に大連が代わるが、なぜか、宣化天皇の前の天皇である安閑天皇の時代に物部尾輿が登場するのである。