完全資本市場の最適資本編成

最適な資本構成とは、すなわち資本コストをできる限り小さくする資本構成のことです。なぜなら、資本コストが小さいと企業価値が大きくなるためです。

  • 完全資本市場の仮定
    情報取得コストがゼロ
    法人税がゼロ
    商品の流動性が十分にある
  • この状態では、企業の資本構成がどのような構成になろうと、企業の価値は変わりません。これをモジリアニ-&ミラーの法則、またはMM理論と呼びます。
    • 投資家は、企業が得る利益が彼らに配当されるか、値上がり益の形で実現するかについては無差別である。
    • 資本市場は完全競争的で、価格に影響を及ぼせるような市場参加者はいない。
    • 取引費用・情報費用は存在しない。
    • 資金借入の条件は企業でも個人でも同じで、利子率は不変、また負債による調達は貸倒れのない範囲に限定される。
    • 法人税は存在しない。

最適資本編成とは

1990年代後半以降、わが国企業は有利子負債の圧縮を続けている。これをMM理論では、説明できない。高格付企業では最適負債比率への調整が相応に進捗している一方、中低格付企業では、1990年代終盤に過剰負債比率(実際の負債比率-最適負債比率)が拡大した後、横這いで推移している。

  • 最適資本構成の理論とは倒産確率や税制などの資本市場の不完全性を考慮した場合であり、資金調達手段としての資本か負債かという選択は無差別ではなく、企業価値を最大化する最適資本(負債)比率は内点解として求められるというものである。これによると、
    • 1.最適負債比率は、負債比率を上昇させることによる資本コストの低減効果と、財務リスク・プレミアムの上昇効果のトレード・オフにより一意に決定される、
    • 2.現実の負債比率が、最適負債比率より高い場合、負債返済や増資により企業価値を高めることができる
  • 近年、東芝や日立のように純資産や自己資本を急減させ、その後増資に走るケースが発生している。またJALのように原油価格の高騰で損益分岐点売上高が上昇するにも関わらず、不況の影響で倒産する例もでている。最適な資本編成を探る研究のニーズは高い。

実際の市場

  • 一般的に負債より株式による資金調達の方がコストが高い。なぜなら有利子負債の利子よりも株主の期待する利回り(リターン)の方が大きいためです。負債比率が上がると、資本コストが下がるうえ、節税効果が生まれるために企業価値は上昇します。
  • 一方、負債比率が上がると、財務リスクが増加するし、格付けも下がる。そして負債コストが上昇することを示します。これは、リスクの大きさの分だけ債権者が高い利払いを要求するようになるからです。また、負債比率が上がれば、株主の要求利回りも上がっていくことから株主資本コストもあがっていきます(CAPMでいうとβが上昇)

財務リスク

財務リスクとは、企業が他人資本(負債)を利用することによって、株主にとっての利益率の変動が大きくなること、あるいは借り入れによって生じる、自己資本利益率の変動に伴うリスクであるといえる。

  • 計算式:税引き前利益πとレバレッジの関係
    π=rA-iD=r(E+D)-iD=rE+(r-i)D
    E:自己資本 D:他人資本 A:総資本 π:税引前利益 ρ:自己資本利益率(π/E) 
    r:総資本利益率i:利子率
    両辺をEでわるとρを表す自己資本利益率の式が得られる。
    ρ=r+(r-i)λ
    λ=D/E(レバレッジ比率)
    • λが大きい程、市場環境の変化による総資本利益率の変動で、大きく自己資本利益率が変動する。
    • 財務レバレッジ効果とは、資本構成中に他人資本の含まれる程度により、自己資本利益率(ρ)が総資本利益率(r)よりも高く押し上げられたり引き下げられたりする現象.
  • 為替、原油価格などの影響で総資本利益率が減少しやすい企業は、自己資本比率を高める必要があろう。

レバレッジの影響

  • 負債比率が高くなるにつれ、自己資本比率は低下して、負債供給者の立場からみて貸倒れの予想確率は飛躍的に高まるため、彼らによる要求利子率は高くなる。
  • 負債比率がある臨界的な値以下ならば、投資家は負債に伴う倒産リスクを気にしないが、臨界値を越えると、リスクの増大に敏感となり、右上がりの程度は負債のコストほどではないが、株主はより高い収益率という形でプレミアムを要求するようになる。

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Last-modified: 2010-07-31 (土) 13:02:00 (3364d)