CAPMのベータ(β)とは

ファイナンス理論 CAPM で書いたように、資本資産価格モデル(CAPM)では、縦軸(y)に資本の収益率、横軸(x)に収益率の標準偏差(収益率の変動性:ボラティリティ)とった時、これをリスク・リターン平面と呼び、完全な均衡状態では、全ての資産が、一本の直線の上に位置することが示される。この直線は、ハイリスク(標準偏差)が大きい程、ハイリターン(収益率が高い)を意味する。ベーター値とは、この直線の傾きのことであり、個別資産の変動性と収益の関係を表わす基本指標である。

  • 通常、ベータは、正の傾きをもつが、金融収縮時はマイナスになることも経験されている。
    • その意味で、ベータは時変パラメータであるが、期間を限って一定とみなすモデルもある。
    • 詳細は、資本資産価格モデルのページと期待効用最大化のページを見てください。
    • CAPMは投資家の行動原理としてMarkoWitz(1952)のポートフォリオ選択(平均・分散モデル)を利用している。

ベーター値とは、個別資産の変動の大きさが市場指数(例えばTOPIX)の価格変動に比べ大きいか小さいかを示す指標です。ベータ値(β値)が1であれば、市場指数と同じ動きをしたことを示し、1より大きければ市場指数より値動きが大きく、1より小さければ市場指数より値動きが小さかったことを示します。

ベータの定義:CAPMのβ

CAPMでは、一定の仮定のもとで、次の資本市場線とベータを定義している。 証券などの個別資産のt時点での超過収益率を。Ritとする。(超過とは、固定金利(risk free interest)からの超過利回りを意味する。) この時、i資産のベータ(一定値:βi)は、次式で表わされる。

Rit = αi+βiRot+εit 
誤差項εitは、N(0,σi^2)と仮定
Rit=Log(Pit/Pit-1)-rft
Pit:i資産のt時点の価格
Rot:t時点のマーケットポートフォリオの超過収益率(excess return)

上式の誤差項の二乗和を最小とする通常の最小二乗法(OLS)の解から、ベータの推定値β*は次式で表わされる。

β*=Cov(Ri,Ro)/Var(Ro)
Covは、2つの時系列Ri,Roの共分散で、VarはRo時系列の分散。
  • 時変ベータ(time-varying betas)は、上記のβiをβitに置き換えたもの。
  • 投資家が自由に固定金利の張りいれを行えるとき、αi=0となることが期待できる。実際にOLSで推定した場合も5%以下であることが、多数のiセクターの実証研究で報告されている。

SVモデル(確率的ボラティリティモデル)によるベータの推定

確率的ボラティリティ モデル のページにその方法を記している。 SVモデルでは、Ritを確率変数として、その期待値と分散の式を扱う。 期待値は

Rit=μit+σitεit     (1)
ただし、εitはNID(0,1):独立な平均0の標準正規分布に従う誤差項

μitは、Ritの期待値である。事前に処理することで、μit=0として扱う場合も多い。 ここで、実際のボラティリティσit^2を、正のスケーリング要素σi*を用いて標準化する。

vit=Log(σit^2/σi*)

対数ボラティリティvitは、1次の自己回帰モデルで表わす。

vit=φivit-1+σηiηit   (2)
ηitはNID(0,1):独立な平均0の標準正規分布に従う誤差項

(1),(2)の式がSVモデルである。ただし、εitとηitの誤差過程は無相関と仮定する。 パラメータφiは、0<φi<1であることが、vitが定常過程である条件である。

  • このSVモデルのパラメータ推定方法については、いろいろな研究がある。 Tayler(1986)によるモーメント推定法、Harveyら(1994)による準最尤推定法、Danielsson(1994)によるモンテカルロ最尤法、状態空間表現に基づくカルマンフィルターによる方法などである。
  • 確率的ボラティリティ モデル を参照のこと

カルマンフィルタによるベータの推定

超過収益率Ritを、観測式で表わし、ベータの推移式を素直に状態推移式で表わすことで、状態空間表現できる。

Rit=βitRot+εit  :観測式
βit=φiβit-1+ηit  :状態推移式
E(εitεis)=δtsσi^2,E(ηitηis)=δtsσηi^2,E(εitηis)=0 for all t and s.

カルマンフィルターは、Ritの観測値を用いて、状態量βitの推定(厳密にはフィルタリング推定)を行うことができる。

  • 詳細は、カルマンフィルタ のページあるいは 状態とパラメータの逐次決定 のページを参照のこと。
  • ランダムウオーク・モデル(RWモデル):ひとつのタイプ

上記の状態推移式を下記のように置くケースである。

βit=βit-1+ηit
  • 平均回帰モデル:MRモデル(Mean reverting Model):もうひとつのタイプ

上記の状態推移式を下記のように置くケースである。

βit=β*i+φiβit-1+ηit
β*i:定数

これは定数項β*iと自己回帰モデルAR(1)のパラメータφiで表現されたモデルである。 長期間の平均βbarと考えることで、φiは、その平均値にもどるスピードを表わすとも解釈できる。次式に書き直してみると理解できる。

βit=βbari+φi(βit-1 - βbari)+ηit
  • 推定すべきパラメータは(σi,σηi,βbari,φi)である。
  • ミーン・リバージョンとは、一般に相場変動の「平均回帰性」と呼ばれている。上下に騰落を繰り返す証券の価格変動において、長期的には、その平均的な水準(均衡値ないし適正価格)に戻る性質のことをいい、「リターン・リバーサル」とも呼ばれている。ミーン・リバージョンは、価格がある程度の自己回帰性を持ち、完全にランダムとはいえないことになり、市場に裁定余地があることになるので、効率的市場仮説への反証を示しています。

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Last-modified: 2010-09-22 (水) 00:07:00 (2925d)