確率的ボラティリティ モデル

資産価格の収益率の時系列を確率過程としてモデル化し、そのリスク(金融時系列の標準偏差:ボラティリティと呼ぶ)を観測されたデータから推定するためのモデルである。

  • Taylor(1986) は,ARCH(Autoregressive Conditional Heteroskedasticity) 型モデルの代替モデルとして離散時間SV モデルを定式化した
  • Hull and White(1987) は直接,原資産が連続時間SV モデルに従うと考えたときのヨーロピアンコールオプションの価格を考察した.彼らは原資産のボラティリティを正の拡散過程に従うと仮定している
    • ボラティリティが一定であるという仮定は現実の金融市場のデータから非現実的である. このことがHull and White(1987) がオプションの価格付けモデルに確率的なボラティリティを導入した理由である。
  • オプションの価格付けは,ボラティリティの理論と密接な関係がある。Black-Scholes(B-S) インプライドボラティリティはオプション価格の市場情報から、オプション価格式を使って標準偏差を逆算することができる。
  • 標準的な資産価格の確率過程
    dSt = μS Stdt + σS StdWt
    Wt は標準ブラウン運動
    瞬間的なボラティリティσS
    • μS とσSが全ての時点t に関して一定であるとは限らない。現実は時変である。
    • μS(It) とσS(It) が全ての時点t に関して一定であるとき, 資産価格は幾何ブラウン運動に従う. このプロセスはBlack and Scholes(1973)で, 有名なヨーロピアンオプションの価格公式を導出するのに使われている

離散時間モデル:SVモデル

Rt =(St − St−1)/St−1 とし,離散時間の次のSV式を考える.

Rt =  σt εt
log σ^2t = γ + φ log σ^2t-1 + ηt 
ここで,{εt} ∼ NID(0, 1), {ηt} ∼ NID(0, σ^2η)で互いに独立
  • ここで,{εt} と{ηt} は互いに独立な正規分布.したがって,{εt} と{σt} も互いに独立.
  • SV モデルはTaylor モデルとも呼ばれる
  • いま,簡単化のためにE(Rt) = 0 としている.
  • ファットテールを捉えるには次の2 つの方法がある. (a) ホワイトノイズεt に裾の厚い分布を仮定する. (b)εt が標準正規分布であっても, ボラティリティσ^2t が変動するならば, t の尖度は3 を上回る.

SV モデルの推定

SV モデルにはパラメータγ, φ, σ^2η が含まれている.これらを推定するために,SV モデル を次のように表現する.

log R^2t= μ + log σ^2t + ξt          (2-1)
log σ^2 t = γ + φ log σ^2t−1 + ηt    (2-2)
ここで,μ = E(log ε^2t), ξt = log ε^2t− E(log ε^2t).
  • パラメータμ は次のように正確に計算可能. まず,ε^2tが自由度1 のχ^2 分布に従うことから,ε^2t= W とおくとき,logW の積率母関数
    m(θ) = E(eθ logW) = E(Wθ)
    を計算して
    SVequation1.JPG
    となる.したがって,
    SVequation2.JPG
    またσ^2ε は
    SVequation3.JPG
    • SVモデルの尤度関数はARCH型モデルの尤度関数のように簡単に書くことができないので,最尤 法は困難である.そこで,尤度に基づかない推定方法が提案されている.その代表的な方法には一般化積率法(generalized method of moments;GMM)と擬似最尤法(quasi-maximum likelihood estimation;QMLE) がある。
    • またベイズ推定で定式化した時変カルマンフィルタモデルも擬似最尤法の1種であるとともに、ボラティリティσ^2t が変動するとして、ファットテイルをとらえることができる。

SVモデルの性質

(a) 収益率{Rt} の条件付き分布はnonnormal
(b) 厳密な尤度関数を導出することは不可能
(c) log R^2tはARMA(1,1) モデル
log R^2t= φ log R^2 t−1 + μ(1 − φ) + γ + ηt + ξt − φξt−1
に従う.
ここで,ηt はnormal,しかしξt はnonnormal.

カルマンフィルタの適用:状態空間モデル

SV モデルにはパラメータγ, φ, σ^2η が含まれている.これらを推定するために,SV モデル を次のように表現する.

log R^2t= μ + log σ^2t + ξt          (2-1)
log σ^2 t = γ + φ log σ^2t−1 + ηt    (2-2)
ここで,μ = E(log ε^2t), ξt = log ε^2t− E(log ε^2t).

γ = 0 としよう。前のSVモデルから μ = −1.270363, σ^2ξ = V (ξt) = π^2/2 である。 そこで、未知のパラメータは、φ とλ = V (ηt)/σ^2ξ = σ^2/σ^2ξ である。 これらは,次の尤度関数の最大化により求めることができる。

  • 誤差項{ξt} や{ηt} は正規分布に従わないので,尤度関数は擬似であるが,推定量の漸近的特性は正規分布の場合と同様である.
    yt → log R^2t− μ
    βt → log σ2t
    と置きかえる。 そうすると、状態空間モデルを得られる。
    yt=βt + ξt
    βt=φβt-1 + ηt
    となる。
  • パラメータとλ = V (ηt)/σ^2ξ = σ^2/σ^2ξが推定されていれば、これを使ってカルマンフィルターで、状態(βt=log σ2)を推定できる。

一般的モデル

Andersen(1994) は多くのモデルを含む以下のような一般的なモデルを考案した.

σ^qt = g(Kt), q∈ {1, 2}
Kt = w + βKt−1 + [γ + αKt−1]ut
ただし,˜ut = ut−1 は平均0,分散1 のホワイトノイズ
  • GARCH(1,1) モデルを得たいならば,Kt = σ^2t , γ = 0, ut = z^2t−1 を代入することにより, σ^2t = w + βσ^2t−1 + ασ^2t−1z^2t−1 とすればよい.
  • また,SV モデルを得たいならば,Kt = log σ^2t , α = 0, γ˜ut+1 = ηt+1, w+γ =ω, β = φ を代入することにより,
    log σ^2t+1 = ω + φ log σ^2t + ηt+1
    ここで, 撹乱項ηt はホワイトノイズ
    とすればよい.

参考


  • Using weekly data over the period 1987-2005, three di erent modeling techniques in addition to the standard constant coecient model are employed: a bivariate t-GARCH(1,1) model, two Kalman Filter based approaches as well as a bivariate stochastic volatility model estimated via the ecient Monte Carlo likelihood technique.

添付ファイル: fileSVequation3.JPG 416件 [詳細] fileSVequation2.JPG 354件 [詳細] fileSVequation1.JPG 378件 [詳細]

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Last-modified: 2010-09-20 (月) 14:25:00 (2926d)