蟻通神社、アリ通し、天武天皇

December 2018 編集されました カテゴリ: 舒明ー聖武
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伊都郡かつらぎ町・蟻通神社(ありとおし) 祭神は知恵の神様で、記紀の神代記にも登場する「八意思兼命(やごころお…

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  • 大阪府泉佐野市 蟻通神社の伝承

     その昔、一人の非情な帝がいた。この帝は、若者を好み老人をきらう心が強く、とうとう、四
    十を過ぎた人が都に居住することを禁止する法令を発布した。そこで老人たちには、都を離
    れ、遠い国へとつてを求めて流れて行くしか生きる通が残されていなかった。
     その時、帝にお仕えするあまたの人々の中に、中将と呼ばれる、非常に聡明な人物がいた。
    彼には齢七十に近いふた親がともに健在であったが、布告が出されてからというもの、両親は
    戦々恐々とした毎日を送っていた。
     「開けば四十を過ぎた人はみな、都にとどまることが許されないというではないか。ましてや
    われらは老残の身、お上のお許しのあろうはずがない」
     中将はたいへん親思いの人物であったので、両親の恐れるさまを見て言った。
     「お二人とも、なにもご心配なさることはありません。お二人のことは私にお任せください。私
    も、一日に一度はあなたがたのお顔を拝見せねば、つろうございます」
     そしてひそかに家の者に命じると、邸内に大きな穴を掘らせ、その中に一棟の家を建てて、
    両親をそこに住まわせた。もちろん世間には、すでにふた親ともども遠国に移したと、いつわり
    の言葉を述べたのである。
     さて、その頃中国の皇帝は、わが国を攻略しようという野望に燃えていた。しかし、実際に軍
    隊を派遣するには、なにか口実がなければならない。そこで皇帝は、帝を陥れる巧みな方策を
    考えついた。
     まず、使者をわが国に派遣すると、一本の材木を帝に献上させた。材木は表面を美しく削っ
    てあり、長さは二尺(約六〇㌢)ほどである。
    「帝におうかがい申しあげます。このたび献上いたしましたこの材木の、いずれが本で、いずれ
    が末でありましょうか」
     難題を吹きかけて、これに答えなければ、厳しく難詰する魂胆である。しかし帝は使者の質
    問に対してうまい解答が思い浮かばない。そこですっかり途方に暮れてしまった。
     朝廷に出仕して、このありさまを一部始終見守っていた中将は、帰宅ののち、両親にこのこ
    とを話した。
     「お父さん、お母さん、今日、朝廷ではこのようなことがありました。中国の皇帝の問いには、
    はたしてうまい答えが見つかるのでしょうか」
     「それはおまえ、簡単なことじや。早瀬に材木を投げ入れてみればよい。最初は材木も、水
    の中でくるくる舞うているであろうが、そのうちどちらかの端が先になって流れてゆくじやろう。
    そちらのほうが木の末にあたるのじゃ」
     翌日、朝廷に出仕した中将は、なにげない顔をして、帝に申しあげた。
    「私に名案がございます。ひとつ試してみましょう」
     そして人々を引き連れて流れの早い川の瀬に行き、材木を投げ入れると、先になったほうに
    印をつけて、使者に手渡した。するとやはり、そちらのほうが木の末であった。
     続いて中国側は、全長が二尺ほどもある二匹の蛇を献上してきた。姿形は二匹ともそっくり
    同じである。
     「謹んでおうかがい申しあげます。この二匹の蛇の、いずれがオスで、いずれがメスでありま
    しょうか」
     今度の問いも難問である。内裏の中で即座に答えられる者は、ただの一人もいない。そこで
    中将は帰宅ののち、ふたたび両親にこのことを話した。
     「他愛もない。二匹の蛇を並べて、尾っぽのほうに細い枝を近づけてみるのじゃ。尾っぽを動
    かしたほうがメスの蛇じゃよ」
     中将の両親はこともなげに答えた。
     翌日、中将が帝の前で両親の教えたとおりにやってみると、はたして一匹だけが尾っぽを動
    かした。そこでそのように使者に告げ知らせると、これも正解であった。
     それからしばらくすると、中国の皇帝は三度日の使者を派遣してきた。今回の献上品は、一
    個の玉である。一見しただけではなんの変哲もないただの玉のようであったが、細かく観察し
    てみると、玉のちょうど反対側の表面に、二個の小さな穴がそれぞれ口を開けている。そして
    それが七曲がりに曲がりくねった小さな空洞によって、玉の内部でつながっているのであった。
    使者は仰々しく口上を述へ立てた。
     「この玉の穴に糸を通していただきとうございます。もっともわが国では、だれもが簡単にやっ
    てのける小細工ではございますが」
     今度という今度は帝も困り果ててしまった。
     「どんな手先の器用な人物でも、こればかりはできかねまする」
     朝廷に出仕する貴族・公卿たちから、はては下々の者に至るまで、みんな口をそろえてその
    ように答えた。そこで中将は、もしやと思い、今回も両親にたずねてみることにした。
     「造作もない。一匹の蟻に細い糸を結びつけ、一方の穴から中にもぐり込ませればよい。そ
    の時、もう片方の穴のまわりに蜜をまぶすことを忘れなければ、蟻は蜜の香りに誘われて、空
    洞を通って向こう側に行くはずじゃ」
     中将は参内すると、両親の教えてくれたことを、そのまま帝に進言した。さっそく朝廷ではそ
    のとおりにやってみたが、はたして蟻は一方の穴から他方の穴へとくぐり抜け、糸は玉を貫通
    した。そこで帝は、糸の通った玉を使者に返還した。
     「日本の国にも賢者はいるものだ」
     中国の皇帝は感嘆し、それからは難題を吹きかけてくることもなくなった。一方、帝の喜びよ
    うはたいへんなものであった。彼は中将を呼び寄せると、親しく声をかけた。
     「このたびのそちの働きはみごとであった。望みのものを申すがよい。官職も、恩賞も、思い
    のままに取らせよう」
     「恐れながら、私は官職も恩賞もほしくはございません。ただ年老いた両親とともに都に住む
    ことを、お許しいただきとうございます」
     「それはたやすいこと。そちの好きにするがよい」
     帝は快く、中将の願いを聞き入れた。この知らせを開いて、国中の人はたいへん喜んだ。
     その後、この中将は神として祀られるに至つた。これが今に残る蟻通明神のはじまりである
    とされている。
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