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コーシーによる代数学の基本定理の証明

代数学の基本定理は 1799 年に 22 歳のガウスによって証明された. ガウスはその後 4 回別証を与え,最後の 証明は 1849 年,72 歳のときに行われた.最初の証明から 50 年がたっていた.

ガウスより少し遅れて現れたコーシーによる証明はとてもシンプルで理解しやすい.

定理 1 代数学の基本定理: n 次の複素係数の多項式は n 個の根をもつ.

[証明] f(x) = x^n + a1x^n−1 + a2x^n−2 + ··· + an−1x + an (C ∋ x,a1,a2,a3,··· ,an ̸= 0) とする.xn でくくって,

f(x) = xn {1 + a1/x^1 + a2/x^2 + ··· + an−1/x^n-1 + an/x^n} = uzとする.

x

z = 1 + a1/x^1 + a2/x^2 + ··· + an−1/x^n-1 + an/x^n —

> 1

つまり、 x→∞ の時 のときzが1に近くなる・

x が原点回りを一周すると u = xn は途切れることなく n 周する.

x

z の第 2 項以降を無視できるほど |x| が大きい場合は uz も連続して原点を n 周する. ここから |x| を どんどん小さくしていくと uz つまり f (x) は最終的に an に近づく.

つまり、x→0 の時 lim uz= lim f(x)=an ̸=0

この |x| を小さくしていく過程で n 重の曲線は n 回原点を横切る.横切るときの x の値が f (x) = 0 の解であ る. つまり f(x) = 0 は n 個の解をもつ.

文献[1] ではこれで証明が終わっているが,実は n 個より根が多い場合を論じていない.n 重の輪が後戻りして いないならばこれでいいのであるが,そうしないことは証明の過程で現れない. もし n 個より多い解をもてば f(x) = (x − α1)(x − α2)(x − α3)···(x − αn)(x − αn+1) というように n 次であることと矛盾している.

[証明おわり]

参考文献 [1] 草場公邦『ガロワと方程式』(朝倉書店,すうがくブックス 7,1991 年)

math/start.txt · 最終更新: 2017/01/11 (外部編集)