地球の温暖化については、まだまだ解明されていないことが多い。
最近になって、南極の氷床コアの分析から、過去40万年間の気温、二酸化炭素濃度、ダスト量の変化 が測定されて、新しい知見がえられている。
42万年の間に4回の周期性をもつ変動が観測されている。コアのデータに見られる大規模な氷期間・氷期のシグナルは見事に一致している。(参考:地球温暖化の歴史)
この観測結果から、次のことが言えるようだ。
1.気候変動のミランコビッチ理論(太陽からの受光量が氷河期・間氷期を決めるという理論)が正しかった
2.10万年の周期で氷河期・間氷期を繰り返してきた。
3.最適気候期とよばれる高温の時代が昔あったが現在は間氷期にあり、寒冷期に向かっている。
このように書くと、現在は温暖化の最中なのに、間違っているのではと思う方も多いでしょうが。これは数万年から数10万年の単位での話です。
短期の気候変動に関する温暖化報告:IPCC
短期間(100年から数10年単位)の最近も気候変動については、IPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)という、国際的な専門家でつくる、地球温暖化についての科学的な政府間機構の研究報告が最も権威がある。
IPCCの温暖化の報告では、つぎのようになっている。
1.1906年~2005年の気温上昇幅は0.74℃である。1956~2005年の昇温傾向は10年あたり0.13℃である。これは1906~2005年の傾向のほぼ2倍である。
2.平均海洋温度は、少なくとも水深3000mまでは上昇している。気候システムに追加された熱の8割超が海洋に吸収され、海水を膨張させて海面水位の上昇に寄与している。
3.20世紀中の海面上昇量は0.17(0.12~0.22)mと推定される。この観測値は信頼性が高い。
4.今後20年間の気温の上昇ペースは10年当たり約0.2℃と予想される
5.海面の上昇量の予測結果は、今世紀末において18~59cmと予測されている。
100年の単位では、温暖化と海面上昇が進んでいる。この主な原因として、人間による化石燃料の使用が地球温暖化の主因と考えられている。1750年以降の人間による活動が太陽放射の変化による増加分よりも、人為起源の変化の総量の方が10倍以上大きいと見積もられている。1万年前から表層温度は低下してきたが、産業革命以降、上昇傾向にあるらしい。
ミランコビッチ理論とは
ミランコビッチ理論とは、太陽からの受光量が氷河期・間氷期を決めるという理論である。
1.公転軌道の離心率(天体の軌道の円からのずれを表す指標)、2.地軸の傾きの変化 および 3.歳差運動 によって、周期的に氷期と間氷期が訪れるという理論である。公転軌道の変化は10万年の周期をもつ。 地軸の傾斜角は、24.5 度~22.1 度の間を4万1千年周期で変動する。歳差運動:公道軌道面に対する自転軸の向きが変化する(コマの首振り運動)こと。この変化は、2万3千年と1万9千年の周期をもつ
この変化は、予測可能なので、氷床コアのデータと太陽からの理論的受光量が良く一致したので、この理論の正確さが再評価されたようです。
夏季、大陸が多い北半球の高緯度地帯の日射量が減少すると大陸氷河(氷床)が発達するということであり、
国立極値研究所の観測結果は、ミランコビッチ理論を支持する結果となっている。
研究によれば、「過去4回のターミネーション(氷期から間氷期への移行)における南極での気温上昇と大気中の二酸化炭素濃度の上昇が、北半球の夏期日射量が増大する時期に起こったことが明らかになった。」としている。
温暖化とCO2
CO2の増加が温室効果を生み出すとの学説が広く支持されている現在であるが、もしかしたら逆に「受光量の増加による温暖化がCO2の増加を生み出している」との見方もある。
気温の上がった半年~1年後にCO2が増えている事実から、CO2濃度の増加で温暖化するのではなく,気温(海面温度)の上昇でCO2濃度が増えるという説をR.F.Keelingは言っている。表層水の温度は太陽活動と地球の受光能で決まるので、北極圏では,過去350年にわたる気温の変化と太陽光の受光量の変化はよく対応している.言いかえれば、受光量の増加によって、気温が上がり氷が融けている。
ヘンリーの法則
これについての根拠は、ヘンリーの法則である。水温20度Cと0℃では、CO2の水中への溶解度は倍も異なる。(ヘンリーの法則)
地球のCO2濃度の歴史
地球に海が安定して存在したのは、約40億年前であった。その頃の大気は高圧のCO2とNでできていた。
海ができることで、大気中のCO2が水に溶けた(ヘンリーの法則)。そして大気中のCO2濃度低下により、温室効果の減少し、大気中の二酸化炭素を数気圧まで下げた。大気中の二酸化炭素は海に溶け,カルシウムイオンと反応して石灰岩をつくり,大気中の二酸化炭素はどんどん減少し,その温室効果も弱くなって気温が下がっていった。38億年前のあたりで、光合成が始まった。酸素の登場である。光合成の担い手はシアノバクテリアであった。 最も古い化石は,35億年前のラン細菌(シアノバクテリア)と考えられている。これは光合成をして酸素を作り出す。石炭紀など、大量の植物遺体の生成期に、酸素が増加した。16億年前まで、海水中に岩石から溶脱してとけ込んでいる二価の鉄イオンが、酸素によって酸化されて三価の鉄イオンになる→溶解度が低いため水酸化鉄として沈殿した。世界の大規模な鉄鉱床は、ほとんどがこのようにしてできた先カンブリア代の堆積性縞状鉄鉱床。これは増大する酸素を減らす負のフィードバックであった。
4億年頃前から、酸素濃度が安定してきた。光合成によって大気中に酸素が蓄積され、ある濃度に達するとオゾン(層)が形成されて、太陽からの紫外線の大半を遮断するようになる。 これが生物の陸上進出を可能にした。
大気中の酸素濃度は一定ではないが、光合成やバクテリアによる正のフィードバックと鉱物などのよる酸化作用の負のフィードバックによって、安定機構が働いて、現在に近い濃度20%の前後で安定している。一方、CO2の濃度はほとんど微小となった。
このことは、海がバクテリアを生み出し、動植物の生命の源となることで、光合成によって、また水中の金属イオンがCO2を吸収・固定して、現在のような、ほとんどCO2の少ない大気を作ったと言える。
最適な気候は?:ヒプサーマル期
人類が地球に誕生し、急激に人口が増加し、文明が発達したのは、縄文時代でした。
7千年~5千年前ころ、現在よりも気温が2~3℃高い温暖な気候が続いた時期があった。この時期を「気候最適期(ヒプシサーマル期)」と呼ぶ。
1.アフリカからアラビア半島,中近東および中国大陸は,現在よりずっと湿潤で降雨量も多く,エジプト,オリエント,インダスなどの古代文明が繁栄した。
2.また,サハラは草原で覆われていたらしく,サハラ砂漠に狩猟の壁画の遺跡が残されている。
3.古代エジプトにおいてはナイル河が氾濫を繰り返すほど多雨であった。そのため天文や土地の測量術が発達した。反対にヨーロッパの中緯度帯などは,亜熱帯高気圧が北偏したため,乾燥していた。
日本ではこの温暖な時期を縄文海進とよんでいる。北海道から東北地方の太平洋側は温暖・乾燥化していた。 近畿地方以西の西日本では,瀬戸内海を除いて温暖・湿潤であった。遺跡の発掘調査から 、西日本には照葉樹林が発達し, 東日本は落葉広葉樹林が発達していた。東日本には大規模な集落が各地に出現した。落葉広葉樹林は生産性が高く,大規模な集落が可能であったからだと推定されている。
縄文海進は、貝塚の存在から提唱されたものである。海岸線付近に多数あるはずの貝塚が、内陸部でのみ発見されたことから海進説が唱えられた。その後、海水面の上昇が世界的に発生していたことが確認された。
この時期は最終氷期終了の後に起きた世界的に温暖化の時期に相当する(完新世の気候最温暖期)。また、北半球の氷床が完新世では最も多く融けていたため、世界的に海水準が高くなった時期に当たる。この温暖化の原因は地球軌道要素の変化による日射量の増大とされている。
約1万1千年前の急激な寒冷化:ヤンガードリアス期
1万1千年ほど前、間氷期に入り、暖かくなった地球は、突然また氷期に逆戻りした。気温にして6度Cほど下がった。これをヤンガードリアス期といい、1千年ほど続いた。この間の寒暖の変動は極めて急激なもので、特に、14700年前の最初の温暖化は、わずか3年間のうちに約10度という大変動だったようです。急激な温暖化が、一転して海流の変化を起こし、寒冷化の原因となったのです。
気温が上昇した間氷期にあって北半球の高緯度地帯では、100年間で約6℃程急激に気温が下がり氷期に逆戻りした時期が1千年続いた。急激な変化は、「深層海流」と呼ばれる地球規模の熱エネルギー循環システムが原因といわれている。氷河が融けてできた五大湖付近の超巨大真水湖が決壊して大量の真水がグリーンランド近海の大西洋に流れ込んだために海水の塩分濃度が薄くなり「深層海流」のエンジンと言える「沈み込み」が止まり、極地付近の気温が急激に下がったという説が有力視されている。その後、ある程度氷河(氷床)が発達したことで再び「深層海流」が復活し、寒冷期が終わったとされている。
最終氷河期氷期の最寒冷期はおよそ2万年前とされており、日本列島およびその周辺では、海岸線の低下によって北海道と樺太、ユーラシア大陸は陸続きに、現在の瀬戸内海や東京湾もほとんどが陸地に、また、東シナ海の大部分も陸地となり、日本海と東シナ海をつなぐ対馬海峡もきわめて浅くなり、対馬暖流の流入が止まったと言われています。
最終寒冷期2万年頃前に日本に人が住み始めた
この時期に日本の旧石器時代が始まったとされている。岩宿遺跡の発見によって、日本の旧石器時代の存在が証明された。これ以降、日本全国において旧石器時代の遺跡の発見が相次ぐことになる。岩宿遺跡の発見・発掘は、神話に始まる日本の歴史(『古事記』『日本書紀』)よりも古い時代に列島に日本人がいたことを明らかにした。1946年、地元の考古学青年、相沢忠洋が旧石器時代の地層である関東ローム層の赤土の中から人工の石器を発見した。2001年7月には約1万7000年前の石器約500点も発掘された。
これまでの最高水位は、現在よりも3から5m高い縄文海進時期(約6000年前)にあたり、最低水位は100m近くも現在よりも水位が低かった最終氷河期(約2万年前)のようです。「新人」(ホモ・サピエンス・サピエンス)はアフリカで誕生したようである。10~20万年前のいつか、アフリカに残っていた古いタイプの人類から新人へ進化した。そこから北上して、10万年前ころに中東へ入り込んだようです。日本に住むようになったのは2万年ほど前であり、氷が発達し水位の下がった寒冷期の寒い大陸から逃げて、温暖な島国にやってきたようですね。
熱収支と物質収支
地球温暖化の予測のためには、太陽からの受光量や宇宙への放熱量などの熱収支やCO2吸収・光合成などの化学反応による物質収支のシミュレーションが欠かせない。また、地球上の観測データの蓄積も重要である。現在のシミュレーションでは、まだまだ未解決や未検証のことあ多いようです。エネルギー保存則や質量保存則やヘンリーの法則のような、法則にもとずく予測を期待したいが、まだまだ不十分でしょう。
1.地球の表面温度、宇宙との熱のやりとりのシミュレーション
2.大気中・海水中のCO2濃度のシミュレーション
3.海水、海流のシミュレーション
4.光合成のシミュレーション
5.人為的活動による炭素収支のシミュレーション など
地球の温暖化の要因は、さまざまであり、統計的な傾向分析のみで、温暖化の議論ばかりするのではなく、科学的な分析に期待したい。
地球温暖化の原因:熱収支と物質収支
6 thoughts on “地球温暖化の原因:熱収支と物質収支”
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陸軍研究局で数学および情報科学局の主任科学者を務めるWest博士は、『Physics Today』誌の2008年3月号に、「太陽の不安定な変動」が地球の複雑な生態系に関連していると書いている。こうした地球と太陽の関係性が、地球温度を上昇させる要因だというのだ。
West博士は、「太陽は、地球の平均気温上昇の原因の実に69%を占めている可能性がある」と指摘している。
『Science』誌のまとめによると、米国気象学会、米国地球物理学連合、米国科学振興協会の3団体すべてが、この数年の間に気温変動の原因は人類だとする証拠には妥当性があると結論付けた声明を出しているという。
2003年以来地球温暖化の原因とされる熱エネルギーの半分近くが「消失」している。サイエンスの4月15日号に掲載された論文(大気圏研究センター(NCAR)のケビン・トレンバースとジョン・ファスロによる)
トレンバースとファスロは、地球という系内で熱エネルギーがどのように働くかを見た。太陽光が地表面に届くと、それは宇宙に跳ね返されるが、その熱エネルギーのいくらかは大気の温室効果ガスによって保持される。化石燃料や森林を燃やすことで大気中の温室効果ガスの濃度を上昇させているので、地球は太陽からの熱をより多く保持するようになった。過去50年間に渡り、その過分のエネルギーのおよそ90%が海洋に吸収(徐々に海の温度を上げる)され、残りは海と陸の氷を溶かしたり、地表面や大気の温度を上げることに使われてきた。言い換えれば、地球温暖化を生み出してきた。人工衛星からのデータは大気中の二酸化炭素濃度が上昇を続けていること、すなわち更なる熱が地球に蓄積されていることを示してるが、地表面の温度変化は予想に反している。
ワシントン大学の海洋学者らが過去20年間にわたる深海温度等のデータを分析した結果、深海の温暖化が海面上昇の一因になっていることが明らかになった。米国海洋大気庁(NOAA)が9月20日付けリリースで発表した。
上層海洋が吸収した熱の16%を3,300フィート以下の深海が取り込んでいることが分かった。深海の温暖化は南極周辺で最も激しく、南極から離れるほど弱まる傾向にあることも分かった。南洋での温度上昇は10年ごとに摂氏0.03度と小さいものの、温度上昇が確認された海水は大量で、熱吸収力も高いため、相当量の熱エネルギーが深海に蓄積されていることになるという。
深海部の平均水温が2-3℃上昇すると、海水に接しているメタンハイドレートが一気にメタンガスに変わり、メタンハイドレートの160倍以上のメタンとなるとされる。さらに、海底部の水温が上昇する環境下では、海水全体の温度が上昇し、二酸化炭素同様、メタンが水中に溶けきれず、空中に放出されてしまう。メタン単体は温暖化係数(電磁波の吸収率)が高く、温暖化現象を促進する。また、それがさらに海水温を上昇させ、ハイドレート融解に影響するといった形で、悪循環(正のフィードバック)にもつながるとされる。
深海の水温の限られたデータ(北太平洋亜寒帯海域の北緯47°の深さ4000mの海水温の1984年から1999年の間)では、0.005℃の海水温の上昇が確認されているという。海水の大循環の時間スケールは2000年程度と考えられているので、この限られたデータが正しいとしても、それが人為的影響のためかどうかは難しい問題である。
海洋研究開発機構は、観測船を使って、深海の海水温を調べています。太平洋の水深4000メートルを超える深海で、海水温が0.005℃~0.01℃上昇していることがわかりました.
東京大学気候システム研究センター教授 木本昌秀氏によれば「海の深い所も合わせて海全体で0.037℃;50年間で上がったと書いてありますけども。なんだ、たったそれだけか。と思うかもしれないけれど。1000倍てことは、空気を暖めるのに使われると37℃上がるわけですね。実際はそうはいきませんけど。だから温暖化がこの程度で収まってるのは海のお蔭でもあるわけです。」とのこと。
気温上昇の影響は40年以内に北太平洋の深海に到達する。気温が上昇すると(表層水が十分に冷却されないため)南極底層水の生成量が減少し、深海の等密度線が変形し、内部波となって北太平洋すべてに伝わる。この結果深海流が弱まり、深海流による冷却効果も弱まり、(地球内部での放射性物質崩壊に起因する)海底地殻からの熱が底層水を暖める。
この現象が温暖化に与える影響は現時点では不明。だが深海に蓄積される熱量は従来想定されていたよりも気温上昇に対して遙かに敏感である以上、南洋の役割を含め今後評価しなおすべき。Science Express掲載論文by海洋研究開発機構(JAMSTEC)