金利とは?円高とは?:為替と金利の経済理論

金利とは何か?と訊ねられて、正しく答えるのは難しい。
WEBのサイトでは、「お金を借りたら、利子をつけて返すのが社会の慣例です。返済時には利子がつきます。これが金利です。」というのがベストアンサーに選ばれていた。
慣例であり、契約に従って支払うものというのも、本質を説明していないようです。
低金利は、デフレ、円高と相互依存関係にあり、円高によるモノづくり産業の悲哀の原因にもなっているという話をしましょう。
まず、金利とは何か?。いくつかの理論的な答えを考えてみる。
1.投資利回り説:借り手の投資家から見た金利
金利は、市場で取引されて決まるお金が生み出す利廻り「投資利得/投資額」です(社会全体の平均投資利回り)。この場合、投資機会の多い好況時には金利が上昇。
2.消費者余剰説:借り手の消費者から見た金利
金利は、消費者がお金を借りれば、財サービスを購入できるので、今日の財サービスをの方が、1年後の財サービスの享受よりもうれしいので、それに対する対価です。(1年間の使用価値/借入額) この場合、消費需要の旺盛な好況時に金利が上昇。
この説明は、金利が借り手の需要で決まると言っているにすぎない。
3..預金者の機会損失対価説
お金を預金するということは、上記の投資の利得や消費の余剰を得る機会を失うが、その対価として、銀行が貸付利益の一部を預金者に支払ってくれる。機会損失に対する対価ともいえるでしょう。
日本は、欧米と比べて、銀行預金の割合が高い。その理由としては、欧米のように自ら投資する意欲が低いこと、消費を嫌い将来のための貯蓄を好むことなどの国民性が言われています。金利の低い日本で、何故、投資や消費よりも貯蓄が選好される明確な説明は難しいようです。あるDNA説では、リスク遺伝子を持つ人の割合が高い民族との研究もあるようです。
もうひとつの説明は、インフレです。1年経過するとものの値段が上がるので、インフレで出る損失に見合った利子が必要との説です。金利は、物価上昇率以上でないとお金の実質価値はどんどん下落します。だれも、インフレ下では預金でなく、土地や物の購入を優先するでしょう。日本はデフレなので、名目金利は低い状況です。
経済学では、フィッシャーの方程式とよばれる、名目金利と実質金利の関係式があります。
名目金利=実質金利+物価上昇率  ・・・・・1式
近年、日本はデフレですので、物価上昇率がマイナスで、実質金利は2%前後です。日本だけでなく、世界中の実質金利が、20年間でみると下がり続けてきました。先進国では、どこも2から3%というのが現状です。この長期間の実質金利低下の理由は、何故でしょうか?。あまり説明がされていません。
4.資産市場説:リスクの対価
もうひとつの金利の見方があります。それは、CAPM(Capital Asset Pricing Model、資本資産価格理論)から与えられる金利です。
CAPMは、すべての金融資産の市場均衡に関する基礎理論ですので、リスクのある資産(変動金利預金、債権、株式、REITなど)の利回りがどのように決まるかを説明しています。そして、借り入れ金利も、現金の利回りですから、金融市場で利子が決まりますのでこの説があてはまります。
利回り(期待収益率)=無リスク金利+リスクプレミアム
無リスク金利とは、固定預金の利回りですので、お金のリスクプレミアムが高くなれば、変動金利は上昇することになります。
多くの人はリスクを避けようとする傾向があるため(リスク回避的)です。
リスク回避的な買い手は、期待収益率が無リスク金利((預貯金の固定金利)よりも大きくなければその金融商品を買わないであろう。
また、リスク回避的な売り手は、無リスク金利よりもたくさんの利子をつけても良い。あるいはリスクに応じて利子がアップそこで、リスクの取引市場が、発生する。リターンは利回り(金利など)であるが、リターンの変動の標準偏差をリスクと定義している。(金融理論)
リスクとリターンをそれぞれ縦軸、横軸に表示し、金融商品をこの上でプロットしたものを、平均・分散平面、あるいはリスク・リターン平面とよぶ。
取引市場で、金融商品が取引された結果、多くの金融商品は1本の市場ラインの上にプロットされる。右肩上がりのハイリスク・ハイリターンのラインである。(市場均衡のライン)
ハイリスクでローリターンな商品は買い手がいないので値下がる(利回りアップ)、逆に、ローリスクでハイリターンな商品は値下がり(利回りダウン)して、市場均衡ラインのあたりの値付けとなる。
CAPMでは、市場の価格変動に応じてリスク資産の利回りが決まるとしている。
金融商品の利回り(r) = 無リスク金利 + 傾き・rの標準偏差
傾き=(全商品の平均利回り - 無リスク金利)/全商品の標準偏差

上記の市場均衡ラインは、リスクプレミアムを定義している。すなわち、金融商品の利回りの変動(標準偏差)が大きいほど、そしてその利回りが固定金利利回りよりも大きい程、プレミアムが大きくなるように、商品利回りが決定されることを示している。
このことは、倒産しそうな大企業の債券利回りや貸付金利が10%以上になったり、リスクの高い消費者ローン金利が10%を超えることからも理解できます。
利回りは、市場環境で大きく変動する。
好況時:大きく右肩あがり・・・・ハイリスク・ハイリターン ライン
平常時:やや右肩あがり・・・・・ハイリスク・ハイリターン ライン
金融収縮時:右肩下がり ・・・・ハイリスク・ローリターン ライン
金融収縮時は、預貯金や国債などの安全性の高い市場に資金回避が発生し、ハイリスクな商品市場の機能不全に陥る。その結果市場のすべての変動性のあるリスク商品の利回りが、無リスク金利より低下する状況が発生する。暴落である。
このことから、資本市場ラインも、好況不況で、右上がりになったりフラットになったりする。最近は、金融収縮で長短金利差も資本市場ラインもフラットになっている。
為替が介在する外貨預金や外債の金利・利回りについて考えてみよう。
金利平価説( Theory of Interest Parity)と円高の関係
金利平価説とは、円預金とドル預金の元利合計が同じになるように為替レートが決まる(金利裁定)という為替がポートフォリオで決まると言う説です。最近は、グローバルな資金の流動性が高まることで、この説が短期には成立しているといわれている。
現在の円預金金利をr、ドル預金金利をq、今の為替レートをf、1年後の(予約)為替レートをg、満期時の為替レートをhとすると、元本が100円とすれば、
円預金の元利合計=100×(1+r)為替をヘッジした場合
ドル預金の元利合計の円換算=100/f×(1+q)×g
ですから
カバー付き金利平価説は、これが一致するようになります。
100×(1+r)=100/f×(1+q)×g ・・・・・金利平衡条件式
為替の予約レートは金利平価条件で決まることになる。
縦軸に日米金利差r-r* 横軸に先物スプレッド (F-S)/S を取り、各時点の値をプロットする。Fは先物の為替相場、Sは直物為替相場。この時、対角線上が 日米金利差-直先スプレッド率=0 であるので、プロットされた点が対角線上に並ぶならば、カバー付金利平価が完全に成立していることになる。実際に過去10年近いデーターでも、この状況が発生している。
金利平価式を書き直すと
日本の名目金利+予想円高進行率=米国の名目金利 ・・・・金利平価式
となる。
円高の理由
フィッシャーの式と金利平価式を使って円高を説明できる。日米の実質金利は比較的安定しており、これを3%としよう。日米のインフレ率をそれぞれ-2%、1%としよう。するとフィッシャー方程式から、日米の名目金利はそれぞれ、1%、4%となる。日米の名目金利格差は4-1=3%ということになるから、金利平価式から、毎年3%づつ円高が進行することがわかる。
日本の輸出企業は円高に苦しめられているので、デフレや金利要因などで円高が発生するなど我慢できない。できれば、購買力平価で為替が決まってほしいと思っているが、そうはならない理由がここにあります。
これが、インフレを作ることで、円高、デフレ、低金利からの脱出ができるというインフレターゲット政策を期待する論拠にもなっている。
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GDPにとって円高が良いか円安が良いか?
よくある答えに、通貨が高いことは、国力の証明であり、海外のモノが安価に入手できるのですから円高が良いという人がいます。
これは、間違いです。
GDPは、国ないの消費と生産に純輸出を加えたものです。そして、分配面では、個人所得や企業の余剰の合計です。ですからGDPにとって円高が良いか否かを考える必要があります。
経済分析では、日本のGDPは円安のときに大きく膨らんでいますので、GDPにとっては円安が良いというのが正解でしょう。円安は、国債貿易理論からも、経常収支を改善しますし、日本は輸出品の競争力が高まり生産が増加する円安のほうが、輸入品が高くなってもメリットが大きいようです。グローバルにみれば、日本の輸出品の内外価格差は大きいですし、中国などとくらべても、購買力平価で為替がきまっていないことでデメリットが感じられます。(これまで為替は短期には金利平価、長期には購買力平価できまるとされてきたが、現実はグローバルな金融要因で為替が決まっている)
世銀などが、購買力平価にもとづく為替を算定しており、中国やアジアの輸出国の通貨は、通貨安のメリットを得ていることがわかっています。また、近年は対外純資産も200兆円を超えており所得収支の観点からも円高時は為替差損が発生しています。
もちろん、現在の問題は、とりわけ長期にわたる失われた15年間の国内民間部門の投資不足、内需の不振、と内需型産業の生産性の伸び悩みにあることは、多くの経済研究で指摘されていますので付け加えておきます。
*失われた15年の原因:円高+デフレ+低金利 の3点セット
日米比較でみた『日本経済の大停滞』の要因の犯人は実質賃金上昇という解説がある。
同感です。政府が債務を増やして公的投資で景気浮揚をすすめたため、民間投資が進まずに雇用問題も発生した。円高とデフレのおかげで国内需要にたよる産業や公的部門の実質賃金を高止まりさせてしまい、生産性の向上も進まなかったようです。輸出産業と内需産業の比較分析からわかります。
参考:為替とは
  :内外価格差
  :金利交換、金利スワップ