日本株出遅れ:株価が上昇しない本当の理由は?

今日の日経新聞に、「世界の株式市場の中で日本株の出遅れが鮮明だ!」との記事があった。
2007年の1月から9月の主要市場の時価総額の比較によれば、下記の通りである。

順位  市場  暴騰率 
1位  中国  104.5% 
2位  韓国  35.6% 
3位  香港  33.6% 
4位  ブラジル  33.2% 
5位  インド  24.0% 
6位  シンガポール  22% 
7位  台湾  19.6% 
8位  南アフリカ  19.3% 
9位  ドイツ  17.7% 
10位  オーストラリア  15.8% 
11位  米国  11.4% 
19位  日本  ▲3.3% 

日本株低迷の理由を、これまで多くの新聞は「米国発のサブプライムローンの信用毀損による影響」と報道してきたが、日本株の市場の時価総額が企業業績の向上程にも伸びない理由は別の理由であろう。
日経新聞は、下記の理由を書いている。
1.中国など、アジアの高い経済成長と投資ブーム
2.サブプライム問題を抱える米国も11.4%アップ
3.日本株の外人売り(8月以降9月末までに1兆7千億円の売り越し)
4.個人投資家の見送り姿勢
5.為替が111円まで一時上昇、現在は115円程度であり、輸出企業の拡大期待が後退
6.内需の回復の鈍さ
などを、理由にあげている。こんな状況では、日本株を買う人が増えそうもないのでしょうか。
8月16日の暴落後のニュースによれば
1.欧米企業と日本企業の時価総額の格差が広がり日本企業が買収されやすくなった。
2.防衛策もかねて企業の自社株買いが急増
3.外貨預金やFXに投資した人の多くが損切り などとありました。
現在、悲観的なエコノミストは、秋以降に111円の円高が米国経済の不振によって再来しそうなどと書いている。多数は楽観的なようですが・・。
本当の理由は、「円高+デフレ」と「世界の過剰流動性」のように思われます。
「円高+低金利+デフレ」の悪弊とは
・円高・デフレは国内企業の活力を弱め、国内生産投資不足や雇用創出の不足、成長の鈍化
・低金利による国内資金の海外流出。株価の低迷。
・安価な輸入品の急増による輸入デフレと地域産業の競争劣後による経済低迷
・株価低迷による国際的なM&Aのリスクの急増
・短期金融市場やベンチャー市場が育ちにくい
何故、「円高+デフレ」なのか、「世界の過剰流動性」がどのように悪影響しているかを考えたい。
まず、最近の為替の動きを示します。
1.為替は、暴落前の状態に徐々に回復しつつあるようです。
2.石油と連動性の高いカナダが強くなり、豪ドル・ユーロも半分程もどしました。
3.米ドルは、弱いまま安定的な動きです。
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日本の株価は、最近1年間はほぼ為替と連動して上昇・下降を繰り返しています。よく為替はプロでないと判らない難しい世界などと言われますが、日本の株価も連動しているので、為替次第といった動きを示しています。
日経平均は2000年に2万円以上に上昇、その後下がり、2002年に1万円を割ってから、徐々に上昇、現在は1万6千円と元気がありません。ダウ平均が5年間で1.8倍近くも、上昇したのと比べてさびしいですね。
東証の株価時価総額も、他国と比べ増大していない。
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これを見れば、日本株が出遅れる構図は、最近の傾向でなく、平成不況以来の失われた15年間の構図そのものであることがよく判ります

諸外国が、「インフレ+高金利+通貨安」に対して、日本が「デフレ+低金利+通貨高」であることが、株価や企業の成長を妨げているのではないでしょうか。
このことは、中国をみればよく判ります。
中国は、1990年頃と比べれば、現在の元の値段は、対ドルで半分程度に低下した。急速に価格競争力を高め、輸出増と高い経済成長を継続してきた。
世界銀行の試算(2001年)は、人民元の実力レートを現実レートの5分の1と大幅の元高になるとしています。(ちなみに、日本円の実力レートは現実レートの1.3倍と大幅な円安としている)。中国は、大幅な経常収支の黒字によって、外貨準備高を急増させながら、それをすべてドルなどの外貨に投資・交換することで元安の維持に努めてきた。(これも日本とは異なる為替政策です)
日本円は、固定相場制時代の1米ドル=360円から経済発展とともに、円安批判と内需拡大の要求下で、110円台まで高くなった。その後1990年には130円/ドルとなった日本円であるが、当時よりも現在は円高である。このことが、日本企業の競争力を低下させ、海外進出を推し進め、海外調達の急増を促した。また輸入デフレも促進させた。
また、外貨建て資産の急増(国内投資の停滞)を招いた。
ここで、最近の国際資金移動に係わる重要な観測結果を紹介したい。
1.日本の株式の外人保有が急増し、総額の25%も外人が保有している
2.平成不況になって後、日本人の外貨資産の保有が増大し、現在200兆円以上の対外純資産(世界一)を保有する国になった。
3.その対外純資産の約半分が民間であるが、外貨準備高の増加と外国為替特別会計の保有など半分は公的保有になっている。
4.国債などの公的債務が急増し、現在1000兆円の公的債務となっているが、この反面として、借り換え債などの短期国債やCB(コマーシャルボンド)の発行が急増し、郵貯・簡保などが株式保有を減らしてきた。これが株価を下げる圧力となってきた。もう限界(郵貯などは、運用のほとんどが国債・財投債になってしまった)。
5.日本人の資産運用の国際化が進みつつあり、家計部門の対外証券投資が急増。原因は、日本の低金利と株価伸び悩み。
6.海外は、過剰流動性で、投機的な資金の流れがつよく、資産インフレ、株価高騰、商品市況の高騰が続いている。
日本だけが、デフレ+低金利+円高(株価低迷)のようです。
グリーンスパン元議長やクルーグマン教授などの報告をみれば、日本のデフレ突入が、金利政策+為替政策のミスによるのではと考えさせられる。以下に列挙。
1.1990年以降、需要減・デフレ移行を早く検知して、迅速に低金利政策を取ればよかったのものを、当時の土地インフレの名残を恐れて、金利低下が遅れた。
2.また、貿易黒字からジャパンパッシングがあり、内需拡大を要求され、サミットでも円高要求が出るなどしたため、構造改革を行うことなく、①円高を放置、②異常な公共投資の再開(小渕内閣など)によって、公的債務(建設国債・地方単独債)を急増させた。
3.公的債務は、郵貯・簡保や銀行の国債などの保有を増加させたが、一方で株式市場に流れるべき資金まで吸収していった。
4.地価の低迷で不良債権処理が問題となるなかで、金融収縮が続き、デフレをこじらせた。
5.小泉政権になってようやく構造改革路線がはじまった。一方で、財投機関の起債に財投債(政府保証債)を導入しその残高が5年程で100兆円も増加した。社会保障関係の費用が高齢化とともの急増し、公的部門の財政収支を悪化させた。
6.ここ数年、財政改革の効果が出てきて、円安移行もあって株価が18000円まで上昇するも、7月以降のサブプライムショックで再び円高+債権高+株安に戻ってしまった。
7.一度、大量発行してしまった国債は、それを低利に抑制する政治的圧力もあって、民間資金の流れを細くしただけでなく、金融市場を捻じ曲げ(distortion)ている。
・証券市場の規制緩和が、後回しになり、国際化に遅れた。
・諸外国と異なり、長短金利差がフラット化して、金融機関の活力を無くしてしまった。
・短期金融市場が全く機能しないゼロ金利が続いたこと、CBの大半が公的なボンドであり、諸外国のように短期金融市場の育成が送れてしまった。
・上記もあって、国際市場での円建て市場の割合が減少しており、日本がアジアの金融センターになるなどの夢は遠のいてしまった。(香港やシンガポール市場の成長)
財政再建の遅れは、生産に廻すべき資本の食いつぶし、(disinvestment)を起こしている。現在、貯蓄率は減少し続けているのも、危険な兆候である。
このまま、円高+デフレ+低金利 が続くと、国内での投資機会が減少し、ますます、外国で資金運用する状況(国内生産資本の劣化と雇用不足)が拡大するのではなかろうか。

健全な成長路線に戻すためには、「円安+リフレ+適度な金利+株価up」の組み合わせ政策によって、国内の信用創造を高める必要がある。
英国はサッチャー政権以降、構造改革を進め、財政が再建するとともに、海外からの投資も回復している。参考になるのでは・・。
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